皆さんは自然共生サイトという言葉をご存知だろうか?サイトというとインターネットのウェブページのようなものを第一に思い浮かべる人が多いのではないだろうか?もしくはキャンプサイトを思い浮かべる人も中にはいるだろう。
ウェブサイトとはインターネット上で情報を提供するページが集まった場所を指す言葉であり、また、キャンプサイトとはキャンプをするときにテントやタープなどを張る場所、拠点となるスペースのことである。
このように「サイト」とは場所やスペースをという意味を持つ言葉である。自然共生サイトの「サイト」もこれと同じように区域や区画、地域など場所を意味する言葉なのだ。
自然共生サイトとは?
環境省によると自然共生サイトを以下のように説明している
「自然共生サイト」とは、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のことです。
要するに、国が認定した民間の生物多様性保全区域ということである。民間人により生物多様性が保全されている国が認めた場所といえば分かりやすいだろうか。
環境省では、自然共生サイトの認定制度を令和5年度から開始し、令和5年中に100ヶ所以上の認定を目指している。認定区域はOECMとして国際データベースに登録されるという。
OECMとは、Other Effective area-based Conservation Measuresの略であり、「その他の効果的な効果的な地域をベースとする手段」や「保護地域以外で生物多様性保全に資する区域」と日本語で訳される。COP10の愛知目標11と同じく、以下で説明するG7の30by30では、保護区やその他の効果的な手段で地域を保全することが約束されているため、この目標達成には欠かせない手段であるのだ。
自然共生サイトの対象となる区域
自然共生サイトの対象となりうる区域は幅広く、企業が所有する森林・緑地、ナショナルトラスト、里地里山、文化的・歴史的な価値を有する地域、都市内の公園・緑地、ゴルフ場、河川敷など、生物多様性の保全が主目的でない場所も含まれるなど様々である。
これらの場所のうち以下の条件を満たしている場合に限り、自然共生サイトの対象となる。
・生物多様性の価値を有する
・事業者、民間団体・個人、地方公共団体による取り組みによって、生物多様性の保全が図られている
なぜ国は自然共生サイトの認定を進めているのか?
その背景にあるのが2021年に広島で開催された第49回先進国首脳会議(以下、G7サミット)だ。G7サミットでは2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標が約束された。この目標を30by30と呼び、これを達成するために保護地域やOECMの設定を進めている。
上述した通り自然共生サイトは国の施策であるが、認定された区域はOECMとして国際データベースに登録される。そのため自然共生サイトの認定はOECMの設定につながり30by30の達成に貢献する。
30by30ロードマップ
環境省は2022年4月に、30by30目標達成までの行程と具体策を示した「30by30ロードマップ」を公表している。30by30ロードマップでは、国立公園等の保護地域の拡張、生物多様性の見える化、そしてOECMを設定することが主要施策とされている。
このように、自然共生サイトとは民間で生物多様性が保全されている区域のことであり、民間の企業が所有する森林やゴルフ場など、幅広い場所が対象となっている。自然共生サイトの認定を進める背景としては、国際目標である30by30で2030年までに陸と海の30%を保全することが約束されており、その手段の一つであるOECMの設定が各国で行われている。そのOECM設定のために行っている日本の取り組みが自然共生サイトであり、2030年に向け現在も進められている。
コメント