生物多様性とは?②

生物多様性の危機

現在地球上の生物はとてつもない速さで絶滅している。しかもこの絶滅は人間活動が起因によるものだという。

生物多様性国家戦略2012-2020では生物多様性の4つの危機を明示している。

生物多様性の4つの危機

第1の危機
第1の危機は、開発や乱獲といった人間活動が引き起こす危機である。

森林伐採や河川の護岸工事、沿岸部の埋め立てといった開発により生物の生息地が減少する事は言うまでもないが、生息地が分断されることにより遺伝的多様性の低下し絶滅確率が上がる可能性なども懸念される。

また食糧資源の乱獲や商業目的での希少種等の密猟は種の絶滅へ追い込み、それが起因で生態系が崩壊する事にも繋がりかねない。

 

第2の危機
第2の危機は里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下である。

里地里山の自然は人間が生活していく中で形成・維持されてきた。里山の雑木林は、人間が椎茸栽培の榾木や薪などに利用することにより適度に伐採され、一定の植生が維持されると共に生物の多様性が保たれてきた。
しかしながら都市部への人口流出や高齢化により自然の利用が減少、利用されなくなった里山はやがて極相林となり多様性は失われてしまう。

水田も人間の活動により形成された生態系(ビオトープ)の一つである。水稲をはじめ一次産業など自然を利用した活動が減少することにより生物多様性は減少してしまうのだ。

 

第3の危機
第3の危機は外来種や化学物質の持ち込みによる生態系の破壊である。

外来種は様々な経緯で様々な経路を通じて侵入してくる。身近な例で言うと公園の池や小川でよく見られるアメリカザリガニが挙げられる。
アメリカザリガニは食用として飼育されていたウシガエルの餌として日本に持ち込まれたが、それが脱走した事により全国へ分布を広げた。食欲旺盛で繁殖力が高いため多くの日本の在来種を捕食、また生息場を奪うことから生態系を大きく破壊している。

殺虫剤や除草剤など農薬等の化学物質の持ち込みも生態系へ影響を及ぼす可能性があるとされる。

 

第4の危機
第4の危機は地球温暖化など人間活動が起因とされる地球環境の変化による危機である。

地球の平均気温が上がることにより海水面の上昇や高山帯が縮小沿岸域や高山帯を生息地としている種は生息地を失いかねない。これにより動植物の20〜30%は絶滅のリスクが高まるという。

ハイマツ等の高山植物の分布縮小やライチョウの個体数減少などが懸念されている。

第1の危機:開発や乱獲など人間活動が引き起こす危機
開発による生息地の減少や生息地の分断による遺伝的多様性の低下、乱獲・密猟により個体数が減少し、種の絶滅・生態系の破壊
第2の危機:里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下
里地里山の自然は人が生活していく中で形成・維持され、人の働きかけがなくなれば維持されず生物多様性は減少
第3の危機:外来種や化学物質の持ち込みによる生態系の破壊
外来種は日本の在来種を捕食、また生息地を奪い生態系を破壊
第4の危機:人間活動が起因とされる地球環境の変化
温暖化が原因で海面上昇・高山帯縮小などが起こり生息地が減少

 

絶滅の恐れがある野生生物と保護規制

上記の4つの危機を受けて日本の野生動植物の3割が絶滅の危機に瀕している。

これらの動植物はみなさんもご存知の絶滅危惧種と呼ばれ、日本では環境省がレッドデータブックならびにレッドリストを作成しリストアップしている。これらは IUCN(国際自然保護連合)が作成したレッドリスト(絶滅の恐れがある野生生物のリスト)をもとに作成している。

絶滅の恐れがある野生生物の代表例として挙げられるのが、クロサイやスマトラサイなどのサイ類、アジアゾウ、ジャイアントパンダなどがある。
日本では南西諸島に生息するイリオモテヤマネコやヤンバルクイナ、海生哺乳類のジュゴン、昆虫ではタガメやオオクワガタなどが挙げられる。

これらの野生生物を保護するための国際条約にワシントン条約がある。正式名書は「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」であり、絶滅の恐れのある野生生物の国際取引を規制するものである。
また、日本では国内での取り扱いを規制する種の保存法(絶滅の恐れのある野生生物の種の保存に関する法律)があり、取引の規制、生息地保護、保護増殖に関する規定がある。

日本の野生動植物の3割が絶滅の危機
環境省は絶滅危惧種をレッドデータブック・レッドリストに記載
日本の絶滅危惧種はイリオモテヤマネコ・ヤンバルクイナなど
野生生物の保護規制
ワシントン条約:絶滅の恐れのある野生生物の国際取引を規制
種の保存法:絶滅の恐れのある野生生物の国内での取扱いを規制

 

 

参考文献・Webサイト
環境省:生物多様性とはなにか
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/biodiv_crisis.html

A-PLAT:高山帯・亜高山帯の生態系に及ぼす影響への対策
https://adaptation-platform.nies.go.jp/db/measures/report_075.html

WWFジャパン:絶滅の危機に瀕している世界の野生生物のリスト「レッドリストについて」
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3559.html

 

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